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個展に寄せて

 


                              岡 惠介  (東北文化学園大学教授)

 幼い頃、わたしは井草の教会付属幼稚園の絵画教室で絵を習っていた。園庭の木漏れ日をガラス越しに浴びながら、水彩で色の寒暖を比べたり、パステルで秋の情景を自由に描いたりするひと時は、小学校とは別の時間が流れているかのようで、今度はどんな絵を描くのだろうと、その日が待ちどおしかった。この絵画教室で指導にあたられたのが江花道子先生で、いつも長い髪を三つ編みにしておられた。1967年の先生の渡欧で、この教室は閉じられた。

 その後仕事についてから、あるオークションで先生の作品に偶然出会った。ただの綺麗な絵とは一線を画す、美しい色彩と大胆なマチエール、骨太の描線の響きに圧倒され、必死の思いで落札した。1990年の作品だった。先日先生の近作をホームページで見せていただき、改めて深い感銘を受けた。繊細な色彩がどの作品からも音楽を奏でており、線描の群像は奥深い人間性とドラマを感じさせる。特に「ヴェネツィアぼたん雪」の文化風土を俯瞰的に描いた構成は新鮮で、不遜な言い方だが新たな展開を感じさせるものであった。今回の個展で、またそうした作品群と出会えるのを心待ちにしている。

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